沖縄三線のツメ(バチ)の話 素材から選び方まで

沖縄三線のツメ(バチ)

私のライフワーク、三線カテゴリーでは、奄美大島の三線を中心に、好き勝手に三線音楽のことを書き綴っている過程ですが、私自身は沖縄の三線を手にして南の島の民謡の世界に興味を持ったこともあり、沖縄の三線は今でも触ることは少なくありません。

奄美の民謡とは違った心地よさが、沖縄本島の民謡をはじめ、宮古民謡にも八重山民謡にもあるのはもちろん、各島の民謡を知ることで、奄美のシマ唄をもっと深く知ることができるという話でもあります。

ぜんぜん違うものだと紹介してきた、沖縄と奄美の民謡も「ぜんぜん違う」と言うのはもはや語弊があって、奄美から沖縄へと伝わった唄、沖縄から奄美に伝わった唄、民謡は密接につながっているということも肌で感じることが出来るようにもなりました。

奄美三線と沖縄三線の違いは、当ブログでも色々と紹介してきましたが、これまではチラッとしか触れたことの無い、沖縄三線のツメに付いて、少々詳しく、私が知る限りのことを紹介したいと思います。

予め断っておきますが、楽器などは人それぞれ、あくまでも私のツメに対するお話だということ、名人と呼ばれる人になるほど、どんなツメを使ってもそれなり以上の音が出るということです、眉にたっぷりとつばを付けてご覧いただければと思います。

ツメ?バチ?

沖縄三線のツメ(バチ)

奄美大島では弦を弾く小道具のことをバチと呼びますが、沖縄の地でもバチとも呼ばれることも多いものの、正しくは「ツメ(爪)」だと教えられました。(余談ですが沖縄や奄美の方言ではツメ(爪)は「チミ」と発音します)

奄美三線は「バチ」、沖縄三線は「ツメ」です。

沖縄・奄美の両三線の弾き方をじっと観察すると、奄美の三線(内地の三線も)では、弦を叩きつける様な弾き方をするので、太鼓のバチと同じく「バチ」という呼び方をするのでは無いかと想像します。

奄美の民謡は内地の民謡の南限という位置づけでもあります、だから、内地に習って同じくバチという呼び方をするのかも知れません。

余談ですが、しゃもじの先端をまっすぐにした様な形のバチを内地の三線が使うようになったのは、内地に三線が伝わった際(大阪の堺市?)に、まず最初に手にしたのが琵琶法師で、琵琶法師が使うバチがその様な形をしていたからだとか。

ということで、ここでは沖縄三線はツメ、奄美三線ではバチと意識して使い分けて書いて行きたいと思っています。

ツメの素材

沖縄三線のツメ 水牛製

最もポピュラーなツメの素材は水牛の角だと言われています。

それから、プラスチックにセラミックやアクリルにベークライトといった各種樹脂。三線の棹の素材として人気の、ご存知、黒檀や紫壇、竹などの木製のツメもあります。

下手すると、そこそこの三線が一本買えたりするんじゃ無いかという象牙やクジラの歯などの素材で作られたツメは超高級品。私は見たこともありませんが、マンモスの牙などというレアな素材のツメも存在するそうです。クジラの歯などを一つ欲しいなと思わなくはないですが、流石に私の懐具合では手が届きません。

最近は動物保護の観点から、象牙やらそれらの天然の素材のバチを、けしからん、という意見も多いみたいですね。密漁などによる殺傷は流石に言語道断だと私も思いますが、天寿を全うしたそれらの動物達の素材を使うのはそんなに悪いことなのか?とは思います。

三線のニシキヘビは良いのか?内地の三味線の犬や猫の皮は?

三味線、三線が全部人工皮になってしまったら嫌だなと思いますが、現実、ニシキヘビの皮を使う必要があるのか?という話をも耳にするので、私なんぞが生きて三線を弾いている間は大丈夫だとしても、次の世代にはどうなるのかわかったもんじゃありません。

素材による音の違い

沖縄三線のツメは、既に紹介した通り、色んな素材で作られますが、ツメの素材によって音は違うのか?という話。

音の良し悪しは、好きか嫌いか、三線との組み合わせなどという好みの問題になってくるので、さておき、三線を弾けば弾くほど、素材による音の違いは感じる様になる、ツメによって音は違うというのが結論です。

さらに加えて、最近思うのが、素材よりも大きさ、重さ、ツメ先の形などの方が音の違いとなって現れると思ってます。

たとえば、木製のツメってイメージ通りな柔らかいタッチの音がして、良いものです。ところが、ツメ先の形が愛用のツメとはちょっと違う、そして大きい割にはちょっと軽い。

私の扱いの悪さも大いにあるでしょうが、余計な音が入って、理想とする音が出しづらく感じています。

形と大きさについて

沖縄三線のツメ

画像は20年ほども前に初めて手に入れた三線(沖縄三線)に付いてきた、多分、プラスチック製の一番安価なツメです。

初めて手にした沖縄三線のツメは、なんと持ちづらく弦を弾きづらいものだというのが感想で、長い間、仕事場の南の島コーナーのオブジェになってました。

今でこそ、このツメもそれなりに扱える様になりましたが、少し伸ばした自分のツメで弾いた方が良い音がすると感じたし、間もなく奄美三線にどっぷりとなったので、沖縄三線を触ることも少なくなってしまい、沖縄三線を演る際にも、ずっと自ツメを使ってました。

ところが、ここの所、沖縄の民謡教室に顔を出して稽古をさせて貰ったりしている間に、やっぱり専用のツメを使ったほうが良いのではないかと思うようになりました。

理由は幾つかあって、私は自分のツメが柔らかく弱いこともあって、理想の音を出せるツメの形を維持するのがなかなか大変。一度割れてしまったりすると、下手すると一ヶ月近くも自爪はアウトです。

専用のヤスリで形を整え、アロエのエキスが良いとか、女性が使うネイル道具で手入れせよ、など、情報仕入れてはせっせと構ってやる必要があります。

沖縄三線の教室へ出掛けて周りを見渡せば、全員がツメを使っていて、確かにツメで弾いた三線の音も良いもんだと思い始め、専用のツメならば、自爪と比べたら何時でも安定した音を出すことが出来るだろう、ならばと、初めての沖縄三線から20年経って、ようやくツメを使えるようにしてみようと思ったのです。

奄美のバチにしても、これだと思うバチにはなかなか出会うことは出来ず、時間かけて今の形に落ち着きましたが、それでも、今も色んなバチを試しています。

沖縄のツメは、さらに加えて、素材はもちろん、形も色々あって、これと言ったツメに落ち着くのには結構な数のツメ試しましたし、これからも色んなツメを手にすることと思います。

それにしても、沖縄三線のツメって、一つ一つの値段が高くていけません!

象牙など、何万円もするツメはさておき、5,000円ほどもするバチは普通にあるので、既に結構な授業料を払った気がします。

知りたがりで収集癖がある癖に、懐具合の寂しい私は「ちょっと貸して貰って良いですか?」と、見たことの無いサイズや容姿のツメを目にした際には、片っ端からお願いして試させて貰っています。

自分にあったツメと出会うには、結構な授業料が必要だと言う世知辛い問題はさておき、形や大きさ、自分にとってのベストなツメと出会うには、色んなツメに触れるしかないという現実問題は避けて通れません。

形と大きさの違い

沖縄三線 ツメ(バチ)

画像を見ただけでも、これぐらい大きさ(形)の違うツメがあることが判ると思います。もっと大きいものも小さいものもあります。

古典民謡を演る人は大きめの重量感のあるツメを使い、速弾きなどは小さいツメが好まれる、そんなことも耳にしますが、人によっては速弾きも重量感のある大きな物が良いなど、某沖縄民謡の大先生の「速弾きは重いツメが良い」という言葉があったり、結局は「好み」と言う話だと理解して良いようです。

余談ですが、コンクールなどフォーマルな場所で演る際には、大きさやや形などよりも、例えば、赤などの派手な色のツメは止めときなさいと言われることもあるようです。

もちろん、これは流派にもよりますし、私の所属する協会は、コンクールの際も自爪がOKだったりします。


沖縄三線 ツメ(バチ)の持ち方

さて、ツメは使いやすいものを選べば良いということですが、私の場合は、つい最近まで、自爪が一番しっくりとする音を出せていたわけで、今でも自爪で弾くことも多いです。

その一番しっくりとする人差し指の形は画像の様な感じになります。

親指と人差し指を重ね、この画像だけでは判りづらいかもしれませんが、人差し指が自然な形でゆるく曲がってる感じになります。


沖縄三線 ツメ(バチ)の持ち方

対してこちら、7.5センチぐらいのツメですが、人差し指が窮屈に曲がってしまいます。どうも指が痛くなるし、窮屈な形になる指がツメを上手にコントロール出来ない理由ではないかと思い、少し短いツメを入手しました。


沖縄三線 ツメ(バチ)の持ち方

これで6センチ弱の水牛のツメです。指の角度は幾らか緩くなって、これならツメの穴を削って調整したら使いやすくなるのではと、ヤスリで擦って穴を広げました。

まだ数ミリ大きくした方が良いかもしれません。

人差し指を自然に曲げるには、ツメの穴も大事だと学びました。


沖縄三線 ツメ(バチ)の持ち方

そうこうしている間に、ある日、三線工房きよむらの清村さんが使っているバチを借りたことろ、これが良い感じなのです。

ずんぐりむっくりな形とベークライトという重量感のある素材、早速作ってもらったのが、画像のツメです。指穴は17ミリと大きめに開けてもらい指の自由度を上げました。

清村さんのツメは私のものと比べたら一回り以上大きなもので、私の物は、5.5センチほどと小さめですが、一般的な形のツメと違って寸を短くしつつも、ずんぐりむっくりな形で、重量はしっかりとあります。

今の所、これが私にとってはベストなツメかもしれませんが、次はこの形と素材でもっと大きなものを作ってもらおうかと密かに考えています。

ツメの重さ

沖縄三線 ツメ(バチ)の重さ

ツメの重さと言うのも、私は重要だと思うようになりました。

今のベストなツメだと紹介した画像の物は、小さいながらも素材の特徴とその形は結構な重さがあって、この重さを利用して弦にツメを置きに行く感じで音を鳴らすと、良い感じで響いてくれるのです。

重いツメは速弾きには向かないんじゃないかという意見もありますが、逆にその重さを利用して、ツメを持っていくだけでしっかりと鳴ってくれるので、重さはまったく気にならず、掛音も入れやすくなりました。

若い頃はギターを弾いていたので、ギターのピックを使えば、速弾きでもかなりの速弾きにも対応できるものの、ちょっと文字では説明し辛いのですが、ピックで弾くと「三線が鳴る」という感じの音が出ないのです。

この感覚に気がついてから、自爪で弾いても三線の音が変わりました。

ツメ先の形

沖縄三線 ツメ先の形

ツメ先の形も色々とありますね。

真ん中のツメ先が三角形になっているのが判ると思います。三角形の先のワンポイントで糸を弾くと言う使い方ですね。

私の場合は尖ったツメ先よりも、自爪の様に、なだらかなカーブを描いた物が好みです。画像の尖ったツメ先も、サンドペーパーで削ってなだらかな面に削ってしまう予定です。

これは正面から見た形ですが、横から見た時の形も、反り上がっていたり、真っ直ぐだったりと色々あることにも気が付きました。

まとめ

自分にあったツメを見つけるには、とにかく、色んなツメを試してみるのが一番だということになってしまいます。

私は人差し指の形を気にしていると書きましたが、窮屈な形を嫌うのであれば、穴に指は入れないという選択肢もツメにはあるわけです。

とにかく、たくさんのツメに触れるしかありませんね。

ありがたいことに、私の場合は厚かましい性格ゆえ、短い間に沢山のツメを手にすることが出来、これだと思うバチを手にすることが出来たと思います。

独学で三線を弾いている方などは、特に私の様には行かないかと思います。

それでも、とにかく、三線に触れ、色んなツメを持つことです。ツメ選びの参考になれば幸いです。


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4 Responses to “沖縄三線のツメ(バチ)の話 素材から選び方まで”

  1. 奄美三線べっ甲バチは購入できるのでしょうか。できるとしたら販売先を教えていただけたらと思います。

    • 奄美のバチはべっ甲含めて販売されている所はほとんど見かけませんね。

      私は、帰郷の際に名瀬市内の「ふくざわ」と言う三線店で購入しております。

  2. 太鼓のバチは「桴」が本字です。
    三味線や三線のは「撥」。「撥弦楽器(はじいて弾くリュート類)」「擦弦楽器(こすって弾くリュート類)」などと説明される差がありますよ。

    • 桴 ですね。

      確かに「撥弦楽器」と「擦弦楽器」と漢字で書くとイメージしやすくなります。以後、こういったことも気をつけて記事を書いて行きたいと思います。ありがとうございます!

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