チヂンと言う奄美大島の島太鼓

チヂン 奄美大島の島太鼓

八月踊りに諸鈍シバヤ、、、どこからか聞こえて来る太鼓の音。

子供の頃奄美大島の加計呂麻島の諸鈍という集落で暮らしていた頃の思い出です。

チヂンという太鼓について

この太鼓の名前が「チヂン」という名の奄美諸島だけにある、特別な物であることを知ったのは、自分が三線を触り始めるようになってからで、島で暮らした頃から数えると30数年の月日が流れた最近の話です。

余談になりますが、三線の音色も身近な物ではあったものの、幼少の頃は、諸鈍集落の唄者であった祖父の膝の上で聴いた三線がぼんやりとした記憶の中にあっただけで、こうして三線奏者になるまで長い時間がかかりました。

先日の投稿 奄美大島 加計呂麻島の諸鈍(しょどん) は母親と二人、数十年振りの帰郷となった訳ですが、親孝行すると良いことがある、床の間の片隅に、埃をかぶった太鼓を見つけました。

叔父に訪ねたところ、30年程も前に亡くなった、祖母が使っていたチヂン太鼓だということ。使う者もなく、そのまま埃をかぶって横たわってありました。

「持って帰れ」との叔父の言葉に、諸鈍での滞在中の暇に任せてばらして掃除して、もう一度締め込み直してとりあえずは音が鳴るように。

チヂンを叩くバチが見当たらないと叔父に告げると、山羊のエサ取りがてら、その足で裏山に行って椎木を切って作りました。

この先、革の張替えなど、メンテナンスが必要になるのは間違いありませんが、私が生きている間は、まだまだ活躍してくれるであろう、嬉しいお宝です。

チヂン太鼓のルーツ

チヂン 奄美大島の島太鼓

さて、このチヂン太鼓、奄美諸島の中でも、奄美本島 喜界島 徳之島 だけに伝わる、知る人ぞ知る太鼓で、徳之島よりも南へ行き、与論や沖永良部では沖縄太鼓が主になるというから面白い話です。

文献によれば、チヂン太鼓に似た締太鼓は、離島に行けばあるにはあったという記述も見られます。それらは、もしかすると奄美諸島の者が持ち込んだものかもしれませんね。

チヂン太鼓のルーツを見ると、中国南部の少数民族ヤオ族に似たような太鼓があり、何らかのルートでこれが奄美諸島に伝わって定着したものだと考えられているそうです。

正直、ヤオ族を訪ねようととはこれっぽっちも思わないし、今のところ興味もないのでこれ以上私の知識では、この奄美大島のチヂン太鼓に触れることは出来ませんが、明らかに本土や沖縄のそれとは違う太鼓が奄美にはあるという話です。

チヂンは締太鼓に分類されますが、奄美のチヂンは三角形の木のクサビをバチで叩いて食い込ませて太鼓の革にテンションをかけて張り具合を調整します。

沖縄で良く使われる締め付け太鼓などを見ると、違いが判りやすいかと思います。ご覧のように、紐の締め付けで革の張り具合を調整しますが、このあたりが大きな違いとなります。

沖縄の太鼓

チヂンの革と音の関係

使われる革は、馬革や牛革。かっては山羊革もよく使われていたそうですが、山羊のチヂンは今では滅多に見かけることがありません。

南の島=山羊 みたいなイメージがあるので、それらしいのは山羊かなと思うものの、革が薄いので加工しづらく、破れてしまうのも早いという話です。

牛革は重量感のある太い音馬革は牛と比べると薄い分軽快な音がなり、山羊は更に薄い分、軽く張りのある音がすると言われています。

私自身、チヂンを手元に置くのが今回初めてなので、まだまだチヂンを語るにはキャリア不足、追々いろんなことが判ってくるかなと思っています。

チヂンと八月踊り

八月踊り

イメージでは、三線と太鼓のセットというのが一般的だと思われがちですが、圧政を強いられ苦労ばかりで貧しかった奄美の民から見れば、三線などは高嶺の花だったと言います。

三線が各家庭にあるようになったのは戦後、しばらくしてからの話でした。

八月踊りと呼ばれる、奄美の人たちが楽しみにする、五穀豊穣を願うお祭りが奄美の各集落では今に受け継がれていますが、そこで打ち鳴らされるチヂンの伴奏こそが奄美のシマ唄のルーツなんだという話は良く聞くストーリーです。

我々が暮らす内地の盆踊りの様なものと想像すると判りやすいと思いますが、もともとはユタ神様やノロ神様の神事だったとも聞きます。

チヂンと唄、指笛に掛け声といったシンプルな盆踊り。

今の時代はYoutubeなどでも観賞することが出来ますが、機会があれば是非、奄美大島へ足を運んで、生の八月踊りを見て下さい。なんとも哀愁のある、チヂン太鼓が鳴り響く様子を見ることが出来ます。

チヂンと島唄

この組み合わせが、内地に住む者にとっては一番良く目にするセットじゃないかと思います。

チヂンは島唄のライブが盛り上がる終盤に登場することが多いです。奄美のシマ唄が好きな人であれば必ずご存知の、ワイド節や六調ではチヂン太鼓はお馴染みでしょう。

ちなみに、六調というタイトルには意味があって、唄と三線、指笛に掛け声に踊り、そしてチヂンが加わって六個、六個の調子が合わさって六調となります。

私の動画ではありませんが、島唄の師匠である 里朋樹 ほか奄美の若手唄者がイベントで演った六調の動画です。

 

諸鈍シバヤとチヂン

チヂン 奄美大島の島太鼓

そして、我が故郷、諸鈍には八月踊りの他にもこの諸鈍シバヤが外せません。

以前にも書きましたが、国の重要無形民俗文化財として奄美でもあまりにも有名な、諸鈍シバヤの中でも、チヂン太鼓はふんだんに使われます。

>>> 諸鈍シバヤの記事

諸鈍シバヤもまた、機会があれば一度はとおすすめする奄美の伝統芸能の一つです。


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2 Responses to “チヂンと言う奄美大島の島太鼓”

  1. 「チヂン」という太鼓は沖縄本島地方に広範囲にあります。ただし、締太鼓ではありません鋲で打ち付けた祭り用太鼓(農耕や漁業)です。「臼太鼓(ウシデーク)チヂン」とも呼ばれており、北部山原地方や琉球舞踊の一部にも使われています。
    「チヂン」そのものは琉球地域の広範囲にて「鼓(つづみ)」系統の打ち物楽器を表す古語として存在していたのではないかと思います。楔太鼓ならば内地にもありますが「鼓」系統の名称のものを見ません。奄美・沖縄の類文化の1つなんだろうなぁ。そう思った次第です。

    • 沖縄本島にもあるのですね、ありがとうございます、全く聞いたことがありませんでした。

      最近特に本島の中北部へ足を運ぶことが多いので努めて話を聞いて回りたいと思います。

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