三線の皮の話

三線の皮の話

三線の皮の種類は二つ

上の画像は三丁の奄美三線です。

この3本の三線の違いが判りますか?

答えは、真ん中の三線が、本張りなどとも呼ばれる、ニシキヘビの皮を使った、なかなか珍しい「本皮張りの奄美三線」です。(友人のもの)

両端の2本は人工皮といって、ニシキヘビ模様をプリントした皮を張った三線になります。

本物の蛇の皮は一本一本模様が違いますが、プリントの物は殆ど模様が同じです。

私の手元には数本の奄美・沖縄三線がありますが、人工皮の三線は、沖縄に奄美に大阪でと全て違う経路で購入しているにもかかわらず、模様は全部同じです。

蛇皮がとんでも無く高価であった時代、戦後間もなくの物資の無い時代には、パラシュート素材のパラシュート三線、紙を張り合わせた渋皮三線、馬の皮など色んな素材の三線がありましたが、現在はニシキヘビの皮を使った本皮と人工プリントの二種類の三線が主流となっています。

本皮と人工皮の比較 どちらが良い?

本皮と人口皮はどちらが良いか?という話が必ず出ます。

当たり前に考えても、値段の高い本皮張りが良いとどうしても思われがちですが、必ずしもそうではありません。

例えば、沖縄と奄美大島の三線では奏法が違います。奄美の三線は、細いバチでどうにかすれば、弦と一緒に胴も一緒に弾いて音を出します。

その為、本皮の三味線だとあっという間に皮が破れてしまったりするというかなり悲しいことになってしまいます。

一昔前は、奄美の三線も本皮張りの物が沢山あったといいますが、これも時代の流れで、人口張りの三線が主流になった背景には、本皮張りが出来る職人が居なくなった、三線に使えるほどの大きなニシキヘビの入手が難しくなってきたということに加え、演奏する場所が変わってきたということが要因だと聞きます。

それまでは、祝いごとや唄遊びなど、各家やそれぞれの集落で歌われて来た小さな集まりでのシマ唄が、近年は、たとえばステージなど大きな場所で披露されることが多くなって来た為に、求められる音が変わって来たとのこと。

その音は、本皮張りの三線ではなかなか出すことが出来ないのです。

三線の皮の話

画像は奄美三線の人口張りの三線ですが、これほどバチが当たって削れてしまっても、人工皮は破れる事がまずありません。

対して、沖縄の三線では、やはり本皮の方が上等だと言われます。

低音から高温までよく響く澄んだ音は、本張りじゃないと出せないと、上等三線=本革張りが当たり前になっています。

ということで、私が常用する三線は、奄美三線は人工張り、沖縄三線は本皮張りです。

二重張り三線

余談になりますが、人工皮の上に本皮を張った、二重張りという三線もあります。(私が知らないだけかもしれませんが、奄美三線の二重張りも見かけませんね)

見た目は本皮ですが人工皮の上に張ってあるので、破れる心配無く、本皮の三線の雰囲気を楽しむことが出来るというワケです。

もちろん、一長一短があり、楽器の命、音には影響が出ます。二重張りは本皮のものに比べると音がこもってしまったりと、やはり本皮の三線にはか及ばないと言うのが定説です。

三線の皮は蛇

三線の皮は蛇です。なので、蛇味線などと呼ばれたりもします。

実物の三線をみたことの無い人からの、よくある質問に、「南の島だから、あのハブの皮を使うのか?」と聞かれたりしますが、三線に使える様な大きなハブは伝説でしかありません。

どうでも良い話ですが、私の奄美の叔父は某集落の入り口付近の山には電信柱程もある主が居ると言い、実際にその大蛇を見たと言いますが、そんな主を捕まえて皮を三線に使ったら、きっとバチが当たると思います。

ということで、三線に使われる皮は、昔から交流のあった、中国やら東南アジア方面からニシキヘビの皮を輸入して、一枚一枚引っ張って伸ばしながら、三線の胴に貼り付けられ使われてきました。

現在では、このニシキヘビの皮も、天然の個体は既に規制がかかって捕ることは出来ず、今、こうして三線に使われるものは、全て養殖されたものだそうで、それとて、今後どうなるのか判らないという話を耳にします。

用途は三線だけに限らず、小物からバッグに胡弓などの楽器、それこそ取り合いになっているのだとか。

沖縄・奄美の三線に使うニシキヘビだけではなく、本土の三線に使われる犬や猫の皮なども同じ様な状況らしく、要は動物の皮を利用するのはけしからん!とのこと。馴染み深い、犬や猫人もなると、更にけしからんという声は大きいみたいで、これからはますます、天然素材の受難の時代なのは間違い無いです。

ジャッキ張りと楔(くさび)張り

三線の皮張

画像は皮を伸ばして貼り付ける作業中の様子です。沖縄の那覇の港の近くにある三線店の前で見かけた、ジャッキ張りと呼ばれる皮の張り方です。

本皮に限らず、人工皮もこうして皮を引っ張り伸ばして銅に貼り付けられます。

昔から行われている伝統的な楔張りと呼ばれる、楔で皮を伸ばす皮の張り方もありますが、近年は圧倒的にジャッキ張りで皮を張る職人が多いと言います。

本皮張り

皮を水に漬けて柔らかくする皮張りの準備中の画像です。(三線工房きよむら

本皮 楔張り

形を整えている途中の本皮です。(こちらもきよむらさんとこ)

どちらの張り方が良いという話ではなく、特に本皮の三線は皮を選ぶところから始まり、こうして一つ一つ手作りで作られるのです。(リーズナブルな人工皮の物はもちろん、本皮張りの胴も、最近では海外から胴ごと輸入され組み上げられたりもするそうです)

これだけ手がかかると、輸入される蛇の皮に加えて職人の技術料なども加わりますから、本皮の三線は人工皮に比べるとずっと高価なものになってしまうのは致し方ないなという話ですね。

人工皮と比べると高価になってしまうことと、一概には言えませんが、遅かれ早かれ使い続けていく間に皮は破れてしまうので、何年かに一度は張替えが必要になってしまうというデメリットがあるために、まず最初の一本はリーズナブルな人工皮の三線が選ばれることが多い傾向はあるという話です。

三線の皮の表と裏

本皮張りの三線は、表と裏の皮が使い分けて張られています。

三線の皮の表と裏

三線の皮の表と裏

上の画像が表、下が裏側です。

ぱっと見ただけでは違いはあまり判らないと思いますが、表の方は大きい鱗が綺麗に並んでいるのが見れるかと思います。

強く貼れば良い音が出るということでは無く、あくまでも全体のバランスという話ですが、大きな鱗が揃っている皮ほど厚みがあり(尻尾の方が厚みがあるらしい)、その分張りを強く出来たりもするのです。

裏側はと言うと、演奏中は人に見えるものでは無いし、表よりも弱く張るのが良い音を出すコツの一つだそうで、少しランクの低い皮を使っても構わないということになります。

ご覧の通り、大きな鱗と小さな鱗が並んで居るのが判るかと思います。

本皮は一枚一枚模様も色艶も違い、デリケートな素材、同じ「C」という音でも皮の張り方によって、高い音、低い音と色々です。職人さんは沢山の皮の組み合わせを想像して音を作り上げるわけです。

信頼の置ける職人さんに欲しい音を作りあげてもらうという楽しみが三線にはあるという皮の話でした。


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