綾蝶(あやはぶら)節について
綾蝶節は1997年にリリースされた、坪山豊さんのアルバム「唄袋の島から」に収録されており、2000年には貴島康男さんが「綾蝶(あやはぶら)の唄」で、最近では里アンナさんのアルバム「紡唄」にも収録されている坪山さんのオリジナル曲です。
綾蝶節は古くから奄美で唄われていた唄ではなく、新民謡という括りになってしまいます。わざわざ新民謡と書いて、区別する必要があるのか?というと、奄美ではあるのです。
最も権威があると言われる民謡大会などでは、作者がはっきりとしている唄では参加出来ないというルールがあります。
とは言え、例えば、私の若い三線の先生の一人、里朋樹などは、幼い頃から坪山さんには可愛がって貰っていたり、坪山さんのお弟子さんにあたる西和美さんなどとも、朋樹は深い縁があります。
自然と坪山さんや和美さんが唄う唄は朋樹達の持ち歌に必ずある、と言うのは当然の事になります。持ち唄であったり、唄い方や三線の弾き方を見ると、◯◯さん、例えば坪山さんの所で島唄を覚えたんだな、とか色んな事が判るものです。
坪山豊さんの代表曲としては、ワイド節などがあまりにも有名で、坪山さんのことは奄美のシマ唄が好きな者ならば誰でも知ってる大御所です。
沢山の唄が坪山さんの手によって作られており、それらの曲は坪山さんと交友があった、唄者達によって、脈々と歌い継がれているのです。
綾蝶節はこんな唄
前置きが長くなりましたが、綾蝶節は当然、里朋樹もライブでは唄ったりします。
今回「綾蝶」を紹介しようと思って動画を探しましたが、何度も聞いているハズなのに、何故か朋樹の綾蝶節の動画が手元にありませんでした、残念です。
こちらの動画は貴島康男さんが唄う綾蝶節です。
個人的にも、ものすごく好きな歌で、「綾」というのは美しいという意味を指し、「綾蝶」と書いて美しい喋です。
単なる美しいと言うよりも、神々しいという意味もあり「美しい蝶」ということで「神々しいまでに美しく愛しい人」に例えて唄っているといわけです。
「どうして、私の故郷を捨てて海を越えて行ってしまうのか。待っているからいつの日にか帰ってこいよ。」
そんな感じでしょうか。
沖縄でも、蝶のことを「はーべーる」と呼びます。同じ言葉ですね。
「綾蝶」と書いて「あやはべる」、これは日本の古語と同源で、沖縄でも昔から蝶は、死者の魂が宿るもの、神様の使いだと言われているのです。
神の使いだと言うのは奄美諸島でも同じですね。
不思議な蝶 アサギマダラ
坪山さんが唄った綾蝶はどんな蝶のことを唄ったものか?
アサギマダラの事を唄ったのではないかという説が個人的には好きです。
このアサギマダラという蝶、海を渡り何千キロも旅することで有名で、春には、遥か東北の方まで飛んで行ったといいう個体も確認されているそうで、秋も終わりになると、また、南の島へと帰ってくるという不思議な蝶なのです。
海を渡る美しい蝶に思いを乗せた唄というが綾蝶節、素敵な唄だと思いませんか?
黄金の蛹のオオゴマダラ
南の島に美しい蝶は沢山おりますが、日本最大の蝶で、南の島の貴婦人とも呼ばれるオオゴマダラもまた不思議な美しい綾蝶だとおもいます。
羽を広げると15センチもの蝶が優雅に舞う姿は本当に神様が何かを伝えている様にも見えます。
奄美群島の喜界島が北限といわれ、喜界島ではオオゴマダラ保護条例を制定して保護しています。
そして、オオゴマダラは黄金色の蛹が美しく輝きます。野生の個体も結構普通に見ることが出来たりしますが、オオゴマダラの蛹と成虫は、奄美本島の龍郷にあるディスカウントショップのビッグツーの一角にある「ちょうハウス」(200円)で見学出来ます。